学生特例納付制度を利用したけど年金を追納するべきか・・。
こんな疑問をもった方に判断するヒントとなることをまとめてみました。
国民年金保険料の学生納付特例制度がわからない方へ
日本国内に住むすべての人は、20歳になった時から国民年金の被保険者となり、保険料の納付が義務づけられていますが、学生については、申請により在学中の保険料の納付が猶予される「学生納付特例制度」が設けられています。本人の所得が一定以下(※1)の学生(※2)が対象となります。なお、家族の方の所得の多寡は問いません。
結論、「追納した方がいい」
理由は
- 永遠に貰い続けることができる
- 社会保険料控除で節税対策
- 保育料の減額(社会保険料控除による)
目次
永遠に貰い続けることができる。
長生きすれば、するほど支払った金額以上に貰い続けることができる可能性がある。
万が一の病気やケガで仕事に制限が発生しても、障害年金の受給条件を満たせば、貰うことができます。
障害年金は、病気やけがによって生活や仕事などが制限されるようになった場合に、現役世代の方も含めて受け取ることができる年金です。
適応事例など詳しい内容は日本年金機構のページを参照ください。
社会保険料控除で節税対策
国民年金の追納をすると納付した年の社会保険料控除の対象になり節税になります。
控除は、大きく「所得控除」と「税額控除」の2つにわけられます。
所得控除とは課税対象となる所得金額を減らせる制度です。
所得控除額が多ければ多いほど課税所得額が減り、課税所得額が一定以上減るときは適用される所得税率が下がり、結果として所得税字体も減ります。
一方、税額控除は税金そのものを減らせる制度です。所得税を計算した後で税額控除を適用し、税額そのものが減額されます。
引用画像:東久留米市 市民税・都民税の計算方法
年金の追納による社会保険料控除は、12月の年末調整または確定申告で申請をおこないましょう。
日本年金機構から社会保険料控除証明書が自宅に届きます。
社会保険料控除証明書は国民年金の追納を1月1日から9月30日までに納付した場合、10月末から11月上旬までに発送。
10月1日から12月31日までに納付した場合は、翌年の2月上旬までに発送されため、控除証明書は年末調整に間に合わないので確定申告で提出するか、支払った際に受け取れる領収印のある控えを年末調整で提出も可能です。
保育料の減額(社会保険料控除による)
自治体により多少の違いはありますが、保育料は給付認定保護者とその配偶者(つまり、夫婦)の市民税額等により決定されます。
保育料は、市町村(特別区)民税所得割額(共働きの場合は、夫婦で合算されます。)をもとに自治体の決めた保育料の区分に当てはめて計算されます。
夫婦で合算した市町村(特別区)民税所得割額がお住まい自治体の保育料区分のどこに区分されるか確認をしましょう。
市町村(特別区)民税所得割額を下げれば、自治体の定める保育料の区分を下がることになります。
年金の追納をすることで社会保険料控除(所得控除の1つ)となり、課税所得金額が下がるため、市町村(特別区)民税所得割額が減額となり、保育料の減額に繋がる可能性があります。
ただし、自治体の保育料決定区分の金額の幅が多い場合、追納しても区分が下がらないケースもあるため、詳しく自治体の区分とご自身の「給与所得等に係る市町村民税・道府県民税特別徴収額の決定・変更通知書」を参考に照らし合わせて確認しましょう。
ただし、こんな疑問が皆さんから出てくるのではないでしょうか。
- 将来の不安。老後必要貯蓄2000万円問題。
- 将来、もらえる年金額が減るかもしれない?貰えるかもわからない?それなのに追納するべき?
- 年金制度の変更で受け取り開始年齢が後ろ倒しの可能性で貰える金額が少ない?
- 年金がもらえないなら、投資で運用した方が貰える金額が増えるのでは?
追納しないとどうなるのか
年金を受け取れる年齢になった時に、全額納付した場合と比べ減額された金額が支給されます。
どのくらい支給額が変わるかのシミュレーション
国民年金の支給額はその年の物価状況によって変動するため、次の条件で概算してみます。
- 令和3年度の国民年金保険料で基準額を、もとに支給額を算出。
- 20-60歳の40年間で、12ヶ月✖️40年=480カ月の納付義務で、学生時代に学生納付特例制度を利用して2年間の未納がある。
令和3年度の老齢基礎年金の満額受給した場合、780,900円となります。・・・①
減額された金額は789,900円*456カ月/480カ月=741,855円・・・②
満額受給①–減額受給②=-39,045円/年減ってしまう。(つまり追納すると増やすことができる金額です。)・・・③
追納金額を計算(平成25年、平成26年の学生特例納付制度を利用したと仮定)
平成25年15,180×12ヶ月=182,160円
平成26年15,330円×12ヶ月=183,960円
平成25年+平成26年=366,120円・・・④
追納金額④/受給額の差額③
366,120円/39,045円=9.376872839031886年となり、約10年で貰える年金が多くなる。
つまり65歳より受給を開始して75歳を超えると追納した金額より多くもらえることが推定されます。
令和元年の簡易生命表によると65歳時の平均余命は男性19.83年、女性は24.63年で平均的に見れば10年以上は長生きする方がほとんどのため、追納した金額より多くもらえることが推定されます。
さらに社会保険料控除になり節税になるため、10年より短い期間で追納した金額より多くもらえることになります。
さらに長生きするほどに減額された金額であれば、
10年間で390,450円、20年間で780,900円の損をしてしまいます。
追納をする際に学生納付特例の承認を受けた当時の保険料額に経過期間に応じた加算額が上乗せされますが、75歳を超えると追納した金額より元が取れて、多くもらえるようになります。
年金を追納を考える上で、不確定要素が多いことが判断に迷いを与えます。
その年の経済動向(物価状況)によって、年金受給額は変わること
投資の方が利回りが良いという考えも否定はできない、ただし、投資は資産価値が変動するリスクがあることを理解しておきましょう。
年金制度が今後も維持された場合、確実にもらえるのが年金制度であり、追納をしてから余剰資金で投資へ回すことがいいかもしれません。参考元:両学長 リベラルアーツ大学、うぇぶりょく、
追納する時の注意事項
追納ができるのは追納が承認された月から10年以内の免除等期間に限られています。
保険料の免除・納付猶予や学生納付特例の承認をされた期間のうち、原則古い期間の分から納付していただきます。
保険料の免除もしくは納付猶予を受けた期間の翌年度から起算して、3年度目以降に保険料を追納する場合には、承認を受けた当時の保険料額に経過期間に応じた加算額が上乗せされますので、お早目の追納をお勧めします。
加算額が上乗せされますが、シミュレーション結果で述べたように、納付金額は少し増えますが、追納により受給年齢から約10年で追納した金額より多くもらえるため、追納を躊躇することはないと考えます。
令和3年度中に追納する場合の追納保険料額
全額免除 | 4分の3免除 | 半額免除 | 4分の1免除 | ||
---|---|---|---|---|---|
平成23年度の月分 | 15,350円 | 11,510円 | 7,680円 | 3,830円 | |
平成24年度の月分 | 15,200円 | 11,400円 | 7,600円 | 3,800円 | |
平成25年度の月分 | 15,180円 | 11,380円 | 7,590円 | 3,790円 | |
平成26年度の月分 | 15,330円 | 11,500円 | 7,660円 | 3,830円 | |
平成27年度の月分 | 15,650円 | 11,740円 | 7,820円 | 3,920円 | |
平成28年度の月分 | 16,310円 | 12,230円 | 8,150円 | 4,070円 | |
平成29年度の月分 | 16,520円 | 12,390円 | 8,260円 | 4,130円 | |
平成30年度の月分 | 16,360円 | 12,260円 | 8,180円 | 4,080円 | |
令和元年度の月分 | 16,410円 | 12,310円 | 8,200円 | 4,100円 | 追納加算額はありません |
令和2年度の月分 | 16,540円 | 12,400円 | 8,270円 | 4,130円 | 追納加算額はありません |
引用:国民年金保険料の追納制度
多くの方が20歳になった年齢は大学生の方が多いので、30歳を迎える年齢までが追納できる10年のの目安と言えそうです。
追納の申請方法
・年金事務所で手続きを行う。
申請書類を年金事務所で記入し提出する。
申請者本人が窓口で申請書を提出する場合は、マイナンバーカード(個人番号カード)を提示する。
手続き・相談窓口でお近くの年金事務所はこちら
・郵送で手続きを行う。
年金機構HPより追納の申請書類をダウンロードし、必要事項を記載。
マイナンバーカードの表・裏両面または1および2のコピーを添付。
- マイナンバーが確認できる書類:通知カード(氏名、住所等が住民票の記載と一致する場合に限る)、個人番号の表示がある住民票の写し
- 身元(実存)確認書類:運転免許証、パスポート、在留カードなど
引用:国民年金保険料の追納制度
学生時代に払っておくべきか?
控除が受けられるため、収入が多い時に追納するという考え方もあります。
新卒から追納をすることが保険料額に加算額も少ないため、追納額は抑えられます。
しかし、新卒の給料で追納することも給料の余裕がある人ばかりではありません。
学生時代でも、アルバイトなど稼ぎがあれば勿論、払うことは可能です。
しかし、毎月15,000円程度の支払いは、学生がアルバイトで稼げる金額で考えると大きい金額かと思います。
学生時代は無理に払わなくても良いです。
年末調整または、確定申告で社会保険料控除を受けられるため、節税になります。
収入が高い就職後の方が節税効果は高いと言えます。
親が収入がない子供の年金を代わりに納付することは、親の社会保険料控除になるため、親の節税対策になります。
各家庭で学生納付特例制度を利用するのか、親が代わりに納付するのか意見が分かれるかもしれません。
追納ができる10年を過ぎてしまった場合
追納できなかった人は60歳を過ぎた時に任意加入制度で追納が可能です。
加入にあたって条件があるので、詳しくは、日本年金機構任意加入制度のページをご覧ください。
クレジットカード払い
原則、国民年金の納付は、クレジットカード払いはできません。
ペイジーまたはインターネットバンキング、全国の金融機関で納付書によるコンビニ納付となります。
ただしコンビニのアプリキャッシュレス決済であれば、クレジットカードのチャージ機能で間接的にポイントを貯めることは可能。
セブンイレブン
nanacoで支払い(セブンカード)
ファミリーマート
ファミペイで支払い。
クレジットカードはファミマカードまたは国際ブランドJCBのカードであれば
ローソン
auPayで支払い。
2022年1月12日作成
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