目次
はじめに
健康志向の高まりで嗜好飲料である炭酸飲料でもゼロカロリーの商品が多くの見られます。
カロリーのある商品と遜色ない味のため、陳列されている商品を選ぶときに、少しでも身体のためと思って、ゼロカロリーの商品を選ぶ方も多いのではないでしょうか。
でも、実際ゼロカロリーって身体にいいものなのか、どうして甘いの飲み物なのにゼロカロリーなのか疑問に思いませんか。
今回はゼロカロリーの仕組み、体への影響は無いのかまとめてみました。
認知度の高い、コカコーラを例に説明していきます。
コーラに使用されている原材料(コカコーラHPより)
コカコーラ
原材料名: 糖類(果糖ぶどう糖液糖、砂糖)/ 炭酸、カラメル色素、酸味料、香料、カフェイン
コカコーラ・ゼロ
原材料名 : 炭酸、カラメル色素、酸味料、甘味料(スクラロース、アセスルファムK)、香料、カフェイン
上記のようにコカコーラとゼロ・コーラでは、原材料の糖類(果糖ブドウ糖液等、砂糖)と甘味料(スクラロース、アセスルファムK)に違いがあります。
果糖ブドウ糖液糖とは、
デンプン(主にトウモロコシでんぷん)を「α‐アミラーゼ」という酵素により液化したものに、細かく分解された多糖類に「グルコアミラーゼ」が作用することでグルコース(単糖)まで分解します。
グルコースイソメラーゼが作用することでブドウ糖の約半分をフルクトースに変化させることでぶどう糖果糖液糖ができます。
体内に消化・吸収されるとブドウ糖として吸収されるため、血糖値が上がり、カロリーがあります。
「ブドウ糖果糖液糖」と「果糖ブドウ糖液糖」の違いは?
果糖ブドウ糖液糖はブドウ糖果糖液糖を精製・濃縮というかていを経ることでブドウ糖の割合が減り、果糖の割合が増えます。果糖は砂糖より甘さが強いため、より甘さを感じる甘味料となります。
「ブドウ糖果糖液糖」果糖の含有率が90%未満のもの
「果糖ブドウ糖液糖」果糖の含有率が50%以上90%未満のもの
「高果糖液糖」果糖の含有率が90%以上のもの
スクラロースとは
スクロースの水酸基3箇所が塩素に置き換わった構造をしている。天然の糖をベースとしているのが特徴である。人工甘味料の一つ。甘味度は砂糖の約600倍と言われている。味覚を感じる受容体がスクロースと立体構造の似たスクラロースを勘違いして甘さの信号を感じると言われている。ただし、ヒトの体内では、消化・吸収されないため血糖値は上がりません。
アスパルテームとの大きな違いは味質。アスパルテームは独特の後味があり。スクラロースは砂糖に近い味質で、苦味や渋味はほとんど感じられない。人工甘味料の中では後味が残りにくいのも特徴である。
余談であるが、アスパルテームは分子構造にエステル結合をもつため、高圧・酸性(つまり缶コーラの内部)などの条件下では加水分解を起こしてしまう為、味が変化してしまう。このためアスパルテームを使ったダイエットコーラの賞味期限は通常の半分程度しかない。
アセスルファムK
アセスルファムKは人工甘味料の一種で、酢酸を原料としてジケテンと酸性洗浄剤などとして利用されているスルファミン酸を合成反応させた後に、三酸化硫黄を反応させ、水酸化カリウムで中和、結晶化して作られています。他の合成甘味料の引き立て役として使用されることが多く、サッカリンやアスパルテームなどと一緒に使われることが多いです。
ショ糖とくらべて200倍ほどの甘みを持っており、甘さを感じさせるスピードはピカイチですが、あとに味をひかないので、比較的あっさりした印象を受ける甘味料です。濃度が高い配合の場合、苦みを感じる場合があります。上部消化管からそのまま体内に吸収され、体内で代謝されることなく、数日以内にそのままの形で尿中に排泄される。
スクラロース、アセスルファムKはカロリーゼロ
でんぷんや砂糖は摂取すると消化管でブドウ糖(単糖)に分解され吸収される。
そのため、ブドウ糖をもつためカロリーがある。
スクラロース、アセスルファムKは、ブドウ糖を持たないためカロリーはゼロということになります。
食物繊維のような感じで体が認識するので、体に蓄積されることはなく、基本的にほとんどが外に排出される仕組みになっています。
コーラ原材料に戻って振り返ると、
コーラは原材料で最も多く含まれているのが果糖ブドウ糖液糖であり、体内では消化・吸収されるとブドウ糖として取り込まれるため、ブドウ糖がたくさん溶けた水を飲むことになるため、血糖値が急上昇することが考えられる。
私たちの体内では、血糖値が正常範囲を超えて高くなった場合、インスリンが作用することで血液中のブドウ糖を肝臓、筋肉へグリコーゲンに変換して蓄えたり、脂肪に変換して細胞へ蓄えるように働くことで一定の範囲に血糖値を維持するように機能が備わっている。
炭酸飲料を日常の水分補給として嗜好品として常に飲むことは、血糖値の急上昇を毎回起こすことになるため、日常の水分補給としては飲み方に注意する必要がある。
一方、ゼロカロリーコーラの原材料は炭酸が最も多く、人工甘味料が使用されていることから、少ない量でも600倍もの甘さを感じるスクラロースやほかの人工甘味料の引き立て役として使用されるアセスルファムKが使われていることから、体内では消化・吸収されることなく体外へ排出されてしまうため、通常のコーラと同様に甘さを感じるが、体に栄養として吸収されない嗜好飲料といえる。
砂糖よりも低カロリーで少ない量でも甘さが強いため、摂取カロリーの減少や摂取後の血糖値の急上昇を抑えることが期待される。
米国糖尿病学会と米国心臓病学会は共同で人工甘味料に関する声明を発表し、砂糖の代わりに人工甘味料を使用することで肥満・糖尿病の予防や治療に有用な可能性があることをまとめている。
注意喚起
以上のように人工甘味料を使用したゼロカロリー飲料は体にとって影響なく、嗜好飲料を楽しむことができる便利なものと紹介してきたが、最近の研究では警鐘を鳴らす研究論文も発表されており、合わせて紹介する。
・GLP-1への影響
インスリン分泌を増加させたという報告もある。
GLP-1とは、食事をとって血糖値が上がると、小腸にあるL細胞から分泌され、すい臓のβ細胞表面にあるGLP-1の受容体に結合し、β細胞内からインスリンを分泌させる。GLP-1は、血糖値が高い場合にのみインスリンを分泌させる特徴がある。
・観察研究であるが糖尿病の発症が否定できない。(血糖、インスリン作用以外での要因が考えられる)
・人口甘味料のひとつサッカリンを投与されたマウスではブドウ糖を投与されたマウスとは異なった腸内細菌叢の分布を示し糖負荷試験で耐糖能異常を認めた(サッカリンと一緒に配合されることが多いため、スクラロースのみで添加される商品は少ないため、注意が必要)
・人工甘味料の強い甘味に対する慣れが、甘味に対する感覚鈍麻をもたらし、より甘味に関連した糖質を多く摂取する可能性もある。
上記のような人工甘味料使用ついて注意すべき研究も発表されている。
結論
血糖上昇や摂取カロリーを抑制し,肥満・糖尿病の予防や治療に有用な可能性がある。一方で疾病予防の可能性についてまだ十分検討が今後も必要である。消費者の我々もゼロカロリーの情報に今後もアンテナを張っておくことが必要です。
参考文献
1)Gardner C, Wylie-Rosett J, Gidding SS, Steffen LM,Johnson RK, Reader D, Lichtenstein AH ; AmericanHeart Association Nutrition Committee of the Councilon Nutrition, Physical Activity and etabolism, Council on Arteriosclerosis, Thrombosis and Vascular Biology, Council on Cardiovascular Disease in the Young;American Diabetes Association ( 2012 ) Nonnutritivesweeteners : current use and health perspectives : ascientific statement from the American Heart Association and the American Diabetes Association. Diabetes Care 35: 1798-1808
2)Steinert RE、 Frey F、 Topfer A、 et al (2011)「Effects of carbohydrate sugars and artificial
sweeteners on appetite and the secretion of gastrointestinal satiety peptides」『BritishJournal of Nutrition』 105、 pp.1320-1328
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